一匹は手水鉢に放した。
残りの一匹は、となりの老婆にやったそうだ。老婆は網の上でピクピクはねるのを、火箸で押えつけて焼き、手掴みで食べたそうだ。
夜、厠に立つと、生きのびたはずのが、白い腹を見せて浮いていた。陽をまともに受ける鉢の水は、煮えかえって、魚を殺したのだ。虫の音しげい草むらに棄てた魚は、ドロボー猫の腹をこやすだろう。
子供は蚊屋の中で、大の字になり涎をたらして寝ている。
血が温いか、冷めたいか、魚と人間の運命がちがうとすれば、それだけだ。
神様が涎をたらすかどうか、それは私も続きを読む
ラベル:幽界通信