顔に掩いかかる邪魔ものをふり拂った
仰向けにもがいていたが
ぱたり起きかえると
一匹のすずめ蛾だ
彼はすが目でじろりねめまわして
云った
この部屋には出口がない
それはわしを不安にする
そのうえお前の鼻腔(はな)にもぬけ道がない
だいたい お前もよっぽど………
彼はちらり嘲笑ったようだ
不安はわしをますます大きくする
見ろ このていたらくを
彼が羽を動かすたびに
それは見る見るひろがって蝙蝠ほどになった
きりぎりすならすり合わせて痩せもしようが
わしの羽は厚すぎる
かんだかい聲をふり上げて
お涙ちょうだいの芝居より
こっちがどんなに悲劇だか───
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ラベル:幽界通信