私ははだしで草地に立った
垣のばらは月光を吸って妖しく濡れた
私は垣をのりこえた
蹠の血は砂地に花びらの烙印を押した
標識燈の光はかすれ
突堤の端に彼が立っていた
蒼白い光の中の浮彫
さすらいの日々にまもり通したもの………
私は全身を陶酔にまかせた
月も中天にこおりついたまま
地も動きを止め
海だけがざわざわと鳴っていた
……………
蹠を刺すいたみに私は醒めていった
潮のみちくるように抗(あらが)いの心が高まり
私はひっしにそれにとりすがった
來てはならない
連れ去るのでなければ
くりかえし叫んだ
彼は瞼をあげた
眼(まなこ)はぎらぎらと光った
「茨」の続き 並びに 詩集のタイトルにもなっている 「幽界通信」 (超オススメ) を読む
ラベル:幽界通信