2009年02月07日

「鼠群」 「挿話」 (詩集「幽界通信」より)。

「鼠群」 並びに 「挿話」 1/2。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。鼠群
 
 
古い街はとりはらわれた
穴ぐらの闇をつかむ鐵骨
人工の曠野にポツネンのこされた
デパートのてっぺんに

黄色い月があがる

ふるさとを追われた
鼠群がゾロゾロ昇天してゆく





挿話
 
 
街は祭りで
空に花火がはじけていた

吹きっさらしの抽籤場で
私のくじは一匹の猿をひきあてた

赤いちゃんちゃんこを着た有難迷惑な景品を肩にのせて
私は歩き出した



「鼠群」 並びに 「挿話」 2/2。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。廣場にトラックがとまり
大きく立ちはだかった男が首ふり手ふり
演説がはじまった

猿が頭をこずくので 私も群れの後に加わった
猿はするすると人々の肩から肩にとびうつり
 彼等の内懐(うちぶところ)に手を伸ばし
何かをとり出して呑みこむ風だった
目を白黒させる顔つきがあまり珍妙なので
私は思わずふき出すところだった
しまいに彼は演説男のふところのものまで呑みこんでしまった
やつらの魂(たましい)です
猿はにやにや笑いながら耳許でささやいた

男が大きな體をすぼめるようにして叩頭した刹那
一陣の風吹き來たり
群集も男もトラックごと
紙屑といっしょにまき上げひっさらって 去った

空に花火が鳴っていて
猿が頭をこずくので 私は歩き出した



町田志津子の第一詩集「幽界通信」の章 2。「黙契」。comment :

今回で「挿話」の章は終りです。
引き続き次号からは「默契」の章に突入します。



 ⇒ ページをめくる。 ↓ 

次の詩、「默契」を読む。


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前の詩、「すずめ蛾」を読む。


[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]

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posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 03:14| Comment(0) | TrackBack(4) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「幽界通信」の目次と小序。
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「鼠群」 「挿話」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 鼠群     古い街はとりはらわれた 穴ぐらの闇をつかむ鐵骨 人工の曠野にポツネンのこされた デパートのてっぺんに
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