2009年02月01日

「顏」 (詩集「幽界通信」より)。

「顏」。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。両の手で掩いかくしても眼は見てはならぬものをみつめようとし
口は不埒なことをわめこうとするので
私は顏を草原にふり棄てた

ひきはがれた顏の下から従順な家畜の顏が生えた

私は風のなびくままに歩いた

街は祭日のように賑わっていたが
人々の眼はやはり家畜だった

線路をいくつ越えたか覚えていない

子供達が電線に凧がひっかかっていると騒いでいた

ふと見上げたらさっき草原に棄てて來たはずの私の顏がはりついていた


閉じた眼(まなこ)から涙ぼうだと垂れ 折からの入日にきらきらと輝き
口はにんまりと笑みを含んでいた





 ⇒ ページをめくる。 ↓ 

続く 2つの詩、「暗い海」並びに「遮断機」を読む。


 ⇒ 戻る。 ↓ 

前の詩、「漁村風景」を読む。


[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]

[目次]



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ラベル:幽界通信
posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 00:45| Comment(0) | TrackBack(6) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「幽界通信」の目次と小序。
Excerpt: 大体創作順に並んでいますが、はじめの 3篇は 中頃のものです。
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Tracked: 2009-02-01 00:48

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて 煮られた鰯が干してある とび出た眼玉 空をみつめ 蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい 山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や 屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
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Tracked: 2009-02-01 00:51

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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Tracked: 2009-02-03 00:03

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
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