2009年01月30日

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。

「漁村風景」。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて
煮られた鰯が干してある
とび出た眼玉 空をみつめ
蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい
山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や
屋根の上 休暇の小學校の運動場まで

漁夫も漁夫の子も焼酎やラムネのラッパ飲み
冬場三ヶ月の窮乏をさらりと忘れ
汚れた札(さつ)に羽根が生える
魚と人間の大ばん振舞い
海の照りかえしに向日葵もカッカッと燃えあがる

梅濱ホテルにひるがえる外国旗

石切場の深い洞穴はその昔の海軍燃料庫
水のしたたる岩の空虚に
ばたり ばたり 羽根打つ蝙蝠の群れ
亂れた敷藁に遺棄された嬰児のなきがらが腐爛してゆく





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[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]

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ラベル:幽界通信
posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 00:01| Comment(0) | TrackBack(3) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「釣られた魚」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 子供はとくいげにバケツの中を示した。藻草のゆらぐ底で、土色をした小さな{まるた}が二匹、頭を寄せ会って、静かにえらを動かしてした。  一匹は手水鉢に放した。  残りの一匹は、となりの老婆にやったそうだ..
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Tracked: 2009-01-30 00:02

「幽界通信」の目次と小序。
Excerpt: 大体創作順に並んでいますが、はじめの 3篇は 中頃のものです。
Weblog: hinden (まほまほファミリー)
Tracked: 2009-01-30 00:02

「顏」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 両の手で掩いかくしても眼は見てはならぬものをみつめようとし 口は不埒なことをわめこうとするので 私は顏を草原にふり棄てた
Weblog: hinden (まほまほファミリー)
Tracked: 2009-02-01 00:55