煮られた鰯が干してある
とび出た眼玉 空をみつめ
蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい
山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や
屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
漁夫も漁夫の子も焼酎やラムネのラッパ飲み
冬場三ヶ月の窮乏をさらりと忘れ
汚れた札(さつ)に羽根が生える
魚と人間の大ばん振舞い
海の照りかえしに向日葵もカッカッと燃えあがる
梅濱ホテルにひるがえる外国旗
石切場の深い洞穴はその昔の海軍燃料庫
水のしたたる岩の空虚に
ばたり ばたり 羽根打つ蝙蝠の群れ
亂れた敷藁に遺棄された嬰児のなきがらが腐爛してゆく
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[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]
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Profile : Takahashi, Hideki : 高橋秀樹
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ラベル:幽界通信
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