燃え上る炎を消すまいと
いちずな瞳で歩いていた
それは幾年(いくとせ)ぶりの啓示(さとし)の火のようでもあった
松原はものうい晝の歌を流し
木の下道はたそがれのような
やわらぎにみちていた
道を出はずれた私は
まばゆい海光のてりかえしの中に
野ばらを見つけた
私はたしかに見た
それは山脈(やまなみ)のはだれ雪のように
点々とちらばっていた
強い潮風に無言の抵抗を示し
小石まじりの砂地に
しっかと根を下ろし
地を這っていた
ばらの上に重なる
私の火 私の月日
いどむ者のためにはとげを
自らも傷つく運命(さだめ)をうべない
ばらはいよいよ白く
悲しいまでに生命(いのち)を凝縮させている
ばらの上の空は深く
海ははてしなく遠い
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[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]
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Profile : Takahashi, Hideki : 高橋秀樹
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ラベル:幽界通信
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