2009年01月24日

「野ばら」 (詩集「幽界通信」より)。

「野ばら」 1/2。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。昏迷のくらがりから 
燃え上る炎を消すまいと 
いちずな瞳で歩いていた 
  それは幾年(いくとせ)ぶりの啓示(さとし)の火のようでもあった

松原はものうい晝の歌を流し
木の下道はたそがれのような
やわらぎにみちていた



「野ばら」 2/2。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。道を出はずれた私は
まばゆい海光のてりかえしの中に
野ばらを見つけた
私はたしかに見た
   
それは山脈(やまなみ)のはだれ雪のように
点々とちらばっていた
強い潮風に無言の抵抗を示し
小石まじりの砂地に
しっかと根を下ろし
地を這っていた

ばらの上に重なる
私の火 私の月日

いどむ者のためにはとげを
自らも傷つく運命(さだめ)をうべない
ばらはいよいよ白く
悲しいまでに生命(いのち)を凝縮させている

ばらの上の空は深く
海ははてしなく遠い





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[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]

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ラベル:幽界通信
posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 17:52| Comment(0) | TrackBack(5) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「幽界通信」の目次と小序。
Excerpt: 大体創作順に並んでいますが、はじめの 3篇は 中頃のものです。
Weblog: hinden (まほまほファミリー)
Tracked: 2009-01-24 18:07

「まんぼう鮫」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 渚にうち揚げられたまんぼう鮫 疊半じょう敷の体をむぞうさに投げ出して うらうらとした春の陽が 粗い灰褐色の膚におどる
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Tracked: 2009-01-24 22:37

「まんぼう鮫」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 渚にうち揚げられたまんぼう鮫 疊半じょう敷の体をむぞうさに投げ出して うらうらとした春の陽が 粗い灰褐色の膚におどる
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Tracked: 2009-01-24 22:37

「野ばら」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 昏迷のくらがりから  燃え上る炎を消すまいと  いちずな瞳で歩いていた    それは幾年(いくとせ)ぶりの啓示(さとし)の火のようでもあった
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Tracked: 2009-01-24 23:04

「默契」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 盛りあがった砂丘の胸に 數本の小松が生えていた
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Tracked: 2009-02-09 01:32