2009年01月22日

「幽界通信」の目次と小序。

大体創作順に並んでいますが、はじめの 3篇は 中頃のものです。

目次

町田志津子の第一詩集「幽界通信」の目次 1/3小序 …深尾須磨子…七


挿話

 野ばら  ………ー三
 まんぼう鮫………ー六
 釣られた魚………ニ〇
 漁村風景 ………ニニ
     ………ニ四
 暗い海  ………ニ六
 遮断機  ………ニ九
 すずめ蛾 ………三ニ
 鼠群   ………三六
 挿話   ………三七



町田志津子の第一詩集「幽界通信」の目次 2/3默契

 默契   ………四三
 ある心象 ………四六
     ………四八
 改正道路 ………五〇
     ………五ニ
 幽界通信 ………五五
     ………五六
 雨夜   ………五八
     ………六〇
     ………六三
     ………六五


赤石

 双子山  ………七一
 山襞   ………七四
 回歸   ………七六
 赤石   ………七八
     ………八〇
     ………八二
     ………八三
 西芳寺  ………八四
 三月堂  ………八五
 秋分   ………八六
 彼岸   ………八七


 …北川冬彦 …八九


あとがき…町田志津子…九〇


装幀・鐵指公藏



町田志津子の第一詩集「幽界通信」の目次 2/3、並びに、深尾須磨子による小序 1/2小序

 眞摯な詩生活二十余年を越え、より深く、より高くへと現代詩の構築に専心しながら、まだ一巻の詩集をも編もうとしない町田志津子さんの態度を一方ではうらやましく思うと共に、やはり一方では、その足跡がなみなみならぬものを知るだけに尚更黙っていられず、かたがた、去年の夏だったかお会いしたときに、私は何となくそんなことを町田さんに話したものである。そのため町田さんも急に詩集刊行を思い立たれ、町田さんが終始一貫指導を仰いでいられる北川冬彦氏の配慮の下に、待望の一巻「幽界通信」を世におくられることになったのは、決して私一人のよろこびではない。

 如上の因縁から、私が序を(あまり好きではない)書かなければならない必然性も生じたわけなのだけれど、私の並べる世迷言などは、もとより蛇足にすぎず、要は「幽界通信」を読んで貰いさえすれば、私が町田さんに詩集刊行を勧めた意図も、なるほどと解って頂けるものと信じている。



町田志津子の第一詩集「幽界通信」の深尾須磨子による小序 2/2 私と町田さんとの交友は、今から約二十年前、町田さんが「麺麭」の同人だった頃に始まったと思うけれど、国漢の素養を身につけ、一方では進歩的な社会運動に熱をいれていた町田さんの詩は、黙々たるその人間性と相俟って、若い頃からいわゆる安易な私詩や過度の感情暴露も見られず、飽くまでも内省的であり、静的なものであった。

 黙々たる町田さん、太平洋戦争による戦争未亡人の逆境をも、ただ黙々として支え、さればこそその詩境は格段の深度と尖鋭度を加え、心にくいまでに沈潜しつつ、複雑な時代意識や抵抗を物象に語らせ、イマージュを屈折させ、展開させる町田さんのいき方は、独特の要約的手法と共に、久しい基盤の上に築かれたユニクな境地を示している。それらの事実は《幽界通信》以後の諸作、例えば《ある心象》《春》《まんぼう鮫》《漁村風景》《顔》その他にはっきり窺われると思う。海を故郷とし、常住地とする町田さんの海にふれた詩は、とくに町田さんのもので他には眞似ようがない。

 人語に絶した戦争未亡人の感懐に千万言を費やすの愚を省き、町田さんはただ黙々として「幽界通信」にまで永遠の結晶を(永遠の!)成しとげた。苦悩も涙もすべてを厳しい詩精神に打ちこみ、老両親と三人の遺児を守り、教育の仕事にたずさわりつつ、なおも「時間」同人として詩作鍛錬をつづけている町田さんに、私はただ心から頭を下げる。

一九五四・春
深尾須磨子







町田志津子の第一詩集「幽界通信」の章 1。「挿話」。高橋秀樹・注。

目次を見ての通り、「幽界通信」は「挿話」「黙契」「赤石」の 3つの章から成っています。では後日より順次、詩をご紹介してまいりましょう。
(著作権者からも了承を得ています。)



 ⇒ ページをめくる。 ↓ 

冒頭の詩、「野ばら」を読む。


 ⇒ 戻る。 ↓ 

[「幽界通信」表紙裏の自署ならびに二枚の中表紙。]

[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]



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posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 23:19| Comment(0) | TrackBack(17) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「野ばら」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 昏迷のくらがりから  燃え上る炎を消すまいと  いちずな瞳で歩いていた    それは幾年(いくとせ)ぶりの啓示(さとし)の火のようでもあった
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Tracked: 2009-01-24 17:59

「幽界通信」表紙裏の自署ならびに二枚の中表紙。
Excerpt: 町田志津子の第一詩集「幽界通信」 の表紙をめくると、作者ご本人様のサインがあります。 生前にお会いすることはかなわなかった私にとって、故人をしのぶ大切な手掛かりの一つでございます。
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Tracked: 2009-01-24 18:13

埋もれた傑作。町田志津子の第一詩集「幽界通信」。
Excerpt: 日本文学史上の秘宝。驚嘆すべき奇跡の一冊。 それが、 戦後の日本を代表する二大女流詩人の一人、町田志津子さんの第一詩集です。
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Tracked: 2009-01-24 18:17

「まんぼう鮫」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 渚にうち揚げられたまんぼう鮫 疊半じょう敷の体をむぞうさに投げ出して うらうらとした春の陽が 粗い灰褐色の膚におどる
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Tracked: 2009-01-24 22:37

「まんぼう鮫」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 渚にうち揚げられたまんぼう鮫 疊半じょう敷の体をむぞうさに投げ出して うらうらとした春の陽が 粗い灰褐色の膚におどる
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Tracked: 2009-01-24 22:37

「釣られた魚」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 子供はとくいげにバケツの中を示した。藻草のゆらぐ底で、土色をした小さな{まるた}が二匹、頭を寄せ会って、静かにえらを動かしてした。 一匹は手水鉢に放した。 残りの一匹は、となりの老婆にやったそうだ。老..
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Tracked: 2009-01-28 23:46

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて 煮られた鰯が干してある とび出た眼玉 空をみつめ 蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい 山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や 屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
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Tracked: 2009-01-30 00:02

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて 煮られた鰯が干してある とび出た眼玉 空をみつめ 蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい 山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や 屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
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Tracked: 2009-01-30 00:02

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて 煮られた鰯が干してある とび出た眼玉 空をみつめ 蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい 山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や 屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
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Tracked: 2009-01-30 00:02

「顏」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 両の手で掩いかくしても眼は見てはならぬものをみつめようとし 口は不埒なことをわめこうとするので 私は顏を草原にふり棄てた
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Tracked: 2009-02-01 00:55

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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Tracked: 2009-02-03 00:03

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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Tracked: 2009-02-03 00:03

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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Tracked: 2009-02-03 00:04

「すずめ蛾」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: むせかえりながらふと覚めて 顔に掩いかかる邪魔ものをふり拂った 仰向けにもがいていたが ぱたり起きかえると 一匹のすずめ蛾だ 彼はすが目でじろりねめまわして 云った   この部屋には出口がない   ..
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Tracked: 2009-02-05 00:00

「鼠群」 「挿話」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 鼠群     古い街はとりはらわれた 穴ぐらの闇をつかむ鐵骨 人工の曠野にポツネンのこされた デパートのてっぺんに
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Tracked: 2009-02-07 03:28

「默契」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 盛りあがった砂丘の胸に 數本の小松が生えていた
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Tracked: 2009-02-09 01:32

「ある心象」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 枝を揉む松 粟立つ砂
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Tracked: 2009-02-11 00:45