2009年01月18日

埋もれた傑作。町田志津子の第一詩集「幽界通信」。

埋もれた傑作。町田志津子の第一詩集「幽界通信」。日本文学史上の秘宝。驚嘆すべき奇跡の一冊。
それが、
戦後の日本を代表する二大女流詩人の一人、町田志津子さんの第一詩集です。

(ちなみに 「二大女流詩人のあともう一人が誰か」は、言わんでもわかるね。)

沼津に在住していた戦争未亡人の方です。その人の第一詩集がある日、高田馬場の街角をふらついていた高橋秀樹の心をとらえることになります。そしてさらには、その中から逐次、曲が付いてゆくことに。

[歌曲集 [幽界通信]]

もうこの世を去ってしまわれたのですが、お会いできぬうちでしたのでその点は残念に思います (ご子息様にはお会いすることができましたが)。

ちびちびと曲を付けては随時、コンサートに載せてきました。

このあと引用するのは、1994/04/29 (金・祝日) 白昼 に 「曼荼羅 II (Manda-la 2)」で行われた
高橋秀樹「幽界通信 LIVE」
のパンフレット掲載の文章です。

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以降、転載。
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歌曲集「幽界通信」

 町田志津子の詩集「幽界通信」(時間社・1954)をテキストにしています。この詩集は、高田馬場の街角で古文書のようになって売られていたものです。B6ほどの大きさのその冊子をたまたま見つけた時、何か自分を呼んでいるように思えて、手に取って開いてみました。すると そこには 他人と思えぬ世界 があり、ただならぬ衝撃と感銘を受けました。意外な所で 意外なものが 高橋秀樹 の興味をひいたものです。ともあれ、たちまち私はこの冊子の虜になりました。

 しかし私は作品自体の他には何も知らない。時間社という会社も含め、作者が何者かは長い間、不明でした。他にどのような作品を出しているかも知らず、添付の解説以外には(戦争未亡人と見られる以外は)予備知識も何もなく、作品に対して愛着だけは日増しに募り、そして遂に、一生かけてこれらの詩の全てに曲をつけよう、と(勝手に)決意しました。ちなみに今までのは、1年に1曲強の作曲・初演、というペースできています。(今回発表のほかに「漁村風景」「鼠群」などを作曲中。)

 作者の生死のほどもわからず数年たちました。ところが先日、富塚研二氏が遂に、勤務先にある出版関係のデータベースを検索したところ、住所などが判明しました。何と沼津の方であり、詩集全体に漂う 魚くささ のような特有な雰囲気 が何となく合点がゆく、という感じでした。私は沼津に手紙を書きました。会いたい。どんな方なのか。お話ししたい。
 ほどなく、横浜に在住の御長男・飯塚晴彦氏から連絡を受けました。残念ながら3年前にお亡くなりになっておられました。しかし飯塚晴彦氏からは、数々の貴重な資料を寄せていただき、当時の様子などが、ずいぶんと伺い知ることができるようになりました。私は今まで何の予備知識もなく何作かを作曲してきたのですが、新しく得られた資料は、演奏の面で、また、これから新曲を作曲するにあたって、よりどころのひとつになることでしょう。

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転載、ココマデ。
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(太字などは、当記事掲載にあたり修飾したものです。)

訂正・補足説明 etc.

「漁村風景」「鼠群」などを作曲中 ⇒ すみません完成しませんでした。当時以降、全体としても筆が止まっています。

富塚研二 ⇒ 当時、歌手として参加。氏についてはそのうちより詳しく解説いたします多分。

幽界通信―詩集 (1954年)
時間社
町田 志津子

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町田志津子の第一詩集「幽界通信」ウェブリアルバム[町田志津子の第一詩集「幽界通信」ウェブリアルバム]

(途上。見られるページが日々少しずつ追加されています。最終的に全ページ揃います。)



 ⇒ ページをめくる。 ↓ 

[「幽界通信」表紙裏の自署ならびに二枚の中表紙。]

[「幽界通信」の目次と小序。]



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Profile : Takahashi, Hideki : 高橋秀樹
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posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 20:40| Comment(0) | TrackBack(13) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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そう言えばあたくし、作曲家なので、
Excerpt: 自作曲のピアノ弾き語りを、今回は しました。   思えば最近は、余興ばっかり、やっとる気が。
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Tracked: 2009-01-20 20:19

「幽界通信」表紙裏の自署ならびに二枚の中表紙。
Excerpt: 町田志津子の第一詩集「幽界通信」 の表紙をめくると、作者ご本人様のサインがあります。 生前にお会いすることはかなわなかった私にとって、故人をしのぶ大切な手掛かりの一つでございます。
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Tracked: 2009-01-22 01:06

「野ばら」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 昏迷のくらがりから  燃え上る炎を消すまいと  いちずな瞳で歩いていた    それは幾年(いくとせ)ぶりの啓示(さとし)の火のようでもあった
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Tracked: 2009-01-24 17:59

「幽界通信」の目次と小序。
Excerpt: 大体創作順に並んでいますが、はじめの 3篇は 中頃のものです。
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Tracked: 2009-01-24 18:07

「まんぼう鮫」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 渚にうち揚げられたまんぼう鮫 疊半じょう敷の体をむぞうさに投げ出して うらうらとした春の陽が 粗い灰褐色の膚におどる
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Tracked: 2009-01-24 22:36

「釣られた魚」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 子供はとくいげにバケツの中を示した。藻草のゆらぐ底で、土色をした小さな{まるた}が二匹、頭を寄せ会って、静かにえらを動かしてした。 一匹は手水鉢に放した。 残りの一匹は、となりの老婆にやったそうだ。老..
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Tracked: 2009-01-28 23:46

「漁村風景」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 潮を泳ぐままに尻尾をピーンとはねて 煮られた鰯が干してある とび出た眼玉 空をみつめ 蒸籠(せいろ)に押しあいへしあい 山がぐんと海に陥ちこんだ狭い道や 屋根の上 休暇の小學校の運動場まで
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Tracked: 2009-01-30 00:01

「顏」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 両の手で掩いかくしても眼は見てはならぬものをみつめようとし 口は不埒なことをわめこうとするので 私は顏を草原にふり棄てた
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Tracked: 2009-02-01 00:54

「暗い海」 「遮断機」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 暗い海     堀割に 濁流はくねりあふれ 道のなかばを浸している
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Tracked: 2009-02-03 00:03

「すずめ蛾」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: むせかえりながらふと覚めて 顔に掩いかかる邪魔ものをふり拂った 仰向けにもがいていたが ぱたり起きかえると 一匹のすずめ蛾だ 彼はすが目でじろりねめまわして 云った   この部屋には出口がない   ..
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Tracked: 2009-02-05 00:00

「鼠群」 「挿話」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 鼠群     古い街はとりはらわれた 穴ぐらの闇をつかむ鐵骨 人工の曠野にポツネンのこされた デパートのてっぺんに
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Tracked: 2009-02-07 03:28

「默契」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 盛りあがった砂丘の胸に 數本の小松が生えていた
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Tracked: 2009-02-09 01:32

「ある心象」 (詩集「幽界通信」より)。
Excerpt: 枝を揉む松 粟立つ砂
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Tracked: 2009-02-11 00:45