ディテールのカキコミ。情報量がスゴイ。
奔放、大胆、斬新、前衛、奇想。それでいて同時に、細かい実に丁寧な仕事をしてらっしゃる。
曽我蕭白 と対決していたのは、伊藤若冲。
誰がなんと言おうと、今回の企画 (巨匠 24人 12組 の対決)、この 怪人・鬼才 二人の勝負が最大の目玉。ここのこのコーナーにトドメを指します。
若冲ですが、まず出迎えてくれたのは、「石灯籠図屏風」。一見、無難な絵です。しかし。まてまてまてまて。こりゃ、点描 じゃないの。ええと点描っつうたら ジョルジュ・スーラ よね。1859年生まれ。若冲が死んだのが 1800年 だから。。。はるか前にすでに若冲がやってたんじゃないの。
今回出てないけど若冲には、「鳥獣花木図屏風」って何万ものマス目で描いたってのもあるわよね。
んもう、「印象派」程度のことで大騒ぎな西洋美術とは、格が違う。次元が違う。若冲たったひとりで、美術史に影響するような画期的な技法の開発をいくつもしているのですから。しかも本人、「技法を開発している」なんて意識なく、やりたくなった表現を、ただ、しただけに違いございません。しれっと。
若冲といったらお馴染みなのは、ニワトリさん。やはり一点、それものが混ざっていました。「仙人掌群鶏図襖」。サボテンかあ。この時代にサボテンは珍しいのでは。
あと、「旭日鳳凰図」の色彩の強烈なこと。
円山応挙 vs 長沢芦雪 も、見る前から、楽しみなカードでした。
円山応挙で好きなのは、「あれ」やら「あれ」なのですが、残念ながらそれらは出ていませんでした
(追記。「それら」。記事 up しました。「これ」と「それ」)。
長沢芦雪 は、必殺の、「虎図襖」を出してきました。これ。顔より前足の方が大きいんですよお。それもあり、実際にはそんなことないのに、絵が襖からハミ出しているかの印象なのよ。そういや しっぽも、ありえん長さ してますね。
ほか「山姥図額」。山姥の顔。体が真っ赤で、顔は少しもかわいくない金太郎。この絵も味わい深い。
こりゃ 芦雪に軍配。。。と思っていたら、応挙 側、猛攻撃。
「保津川図屏風」。ものすごいダイナニズム。ザザザザーッと雪崩れ込んでくる水流。迫力。
おっと、芦雪は「海浜奇勝図屏風」。右が近景、左が遠景。右の絵を見て、左に視線を移動させます。パノラマ効果が抜群。
「こりゃどっちもスゲー」ですが、やっぱり芦雪に軍配ですな。
こういう企画でしたら、どの作品を出してくるか、が極めて重要になってきます。若冲・応挙はベストメンバーで戦っていません。もちろん、蕭白も芦雪も、まだまだ他にスゴイの、いくらもございますが。
運慶 vs 快慶。
この対決は、なくてもよかったかもしれません。何で混ざってるの君たち、というカンジです。これは、作者の格が他より落ちているわけではございません。ベリー・ベストの作品同士の比較でない、という点で、「何で」と感じました。仏像なら、通常展示の方で、タダで、いくらもスゴイの見られますがね。
雪舟 vs 雪村 (せっそん)。
雪舟は、おそらくいちばん有名な「秋冬山水図」を出してきました。
いつも思うのですが、右隻・やや左より中央に出現している 時空の裂け目のような黒いタテ線は、こりゃ一体、何なのでしょうか。どなたか教えてください。裂け目の右と左とでは風景が変わっているし。裂け目の右側。何ですかこりゃ摩天楼ですか蜃気楼ですか。この時期に摩天楼なハズないわね。断崖絶壁かなにか ?
(これ、「秋冬山水図」。会期後半にしか出してなかったのですね。。。)
雪舟、さらに、「慧可断臀図」も出してきました。望み得る最強の布陣で臨みます。
対する 雪村 (せっそん) は。。。ありゃ。慧可と対決するなら居るべき「呂洞賓図」が。差し替えでもう居ないの。うわーん。
そうは申しましても、「蝦蟇鉄拐図」が出てます。これ一作で、雪村 (せっそん) の勝ちは決定ですけれど。
雪村 (せっそん) といえば、今回出てないですが、「列子」さんが空高ーく浮き上がっている絵がございます。
(列子 : あの、「杞憂」とか「朝三暮四」とか有名なコトバの元となった人。)
それの実物、見てみたかったな。
若冲・蕭白の非凡極まるバケモノ・アートの後の人たちは、すっごい、気の毒なことになっていました。
直後の、大雅 vs 蕪村。
ショボ !!
一見して、貧相。普段の普通の展示でしたらこんなことにはならんかったでしょうに。
オーラが、違い過ぎるのよ。
作品から どわー と迫ってくる、ね。
生命力とか。表現の強さとか。
ねー、ホントに。
単品で見せられるならソレナリ (と申しますか巨匠) の作品たちが、
若冲・蕭白以後に見せられてしまっちゃあ、もうダメです。
直後どころか、その後に続く全員が、もうダメでした。
横山大観も、ホントだったら まだ、もうちょい、マシだったんでしょうに。
今回の対決企画に、河鍋暁斎、いませんでしたね。
「外人に見せて日本のスゴさを自慢したいアーティスト」では、ひできチャート、上位の人なのですが。
あと、葛飾北斎ね。この人、スゴイわ。
後記。
あたくしが出会わせた二人、兵頭喜貴・佐藤直樹 両名は、ヌケガケで既に行ってた模様。
[変態対決] -掲示板並びに生態観察日記 - [兵頭写真館Z とある写真作家の足跡]
この展覧会、7/17 日曜 までです。
ちなみに、会期中に差し替えとなるものもございます。
7/11 月曜から (ラスト一週間) は、なんと、俵谷宗達 vs 尾形光琳 のコーナーで、あの国宝、風神・雷神 が お出まし。両者の 風神・雷神 を並べて比較できる機会は、今後あるものなのでしょうか。
推薦図書。
今日気になった赤の他人のサイト。
[京都 洛中洛外 日々是好日: 「若冲を愉しむ」 京都国立博物館(常設展)]

写真は、ここで話題にした若冲の「石灯籠図屏風」。右隻のみ。
後記。2
2006年の夏には、同じ 東京国立博物館 で 「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」 てのも、ございました。
この美術展も、素晴らしいものでした。
ご覧にならなかった方々は、もう、ホントウにお気の毒。としか申せません。それくらい。
今回の美術展と、あわせて、両方、見ておくことができたのは、幸運でした。
前述の、何万ものマス目で描いたっていう、若冲の「鳥獣花木図屏風」も、そのとき実物に拝謁することができました。ほかに、「花鳥人物図屏風」「鶴図屏風」「伏見人形図」。。。書き出しておられなくなりました。夥しい量の傑作が続々、出ていました。
曽我蕭白もございました。今回出ているのとは違う、「寒山拾得図」も出ていました。
円山応挙の別の絵も、長沢芦雪のあれやこれや (特に「白象黒牛図屏風」) も、見られました。
よかったです。
[「若冲と江戸絵画」展 公式ブログフォトライフ - 鳥獣花木図屏風/伊藤若冲]

[「若冲と江戸絵画」展 公式ブログフォトライフ - 白象黒牛図屏風/長沢芦雪]

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[完全に気が触れた世界・曽我蕭白「群仙図屏風」 (六曲一双) で発生中の怪異現象。]
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感想がかなり被ってるみたいで安心しました。
(って、何を安心してるんでしょうか)
「風神雷神図屏風」は2年程前に出光美術館で宗達、光琳、抱一が一堂に会する展覧会が催されていますから、今後も並列展示は行われ続けると思います。
付け加えておくと、会場の土産物売り場で若い女子2人組が、光琳の絵はがきを指差し「クリムトみたいだね」とつぶやいておりました。もちろん、現実にはクリムトこそ琳派の末裔なんですけど・・・
慶派の仏像は、山と名品があるというのに・・・あんなものを出すくらいなら、仏像は全部なくて良かったと思います。
もっとも、慶派の最終兵器は東大寺の仁王像ですから、会場に持ち込めないんですけど。
蘆雪の「虎図襖」は、猫を虎のように見せかけて描いた戯画だと解釈してます。当時の絵師達は虎の毛皮と猫をモチーフにして虎を描いているので、仕草や表情が猫っぽいのですが、そこが猫好きにはたまらないようです。そのため、縮小版の屏風は、これだけ売り切れでした。
個人的には、番外編として、松本喜三郎と安本亀八の二大生人形師対決を加えて欲しかったと思ってます。この対戦カードなら、蕭白VS若冲の後でも充分に力を発揮出来たはずです(注:東博は三代目安本亀八の生人形を多数所有していながら、修復出来ていないことを理由に、長らく一般公開していないのです)
個人的には、大観を筆頭とする明治画壇の欺瞞性や薄っぺらさが、見事に顕在化していて、あの後半のダメっぷりはなかなか気に入ってます。あれは学芸側も意識的にやってますよね。
「応挙は実は虎を見たことがない」と聞いたことがあります。想像で描いたにしてはスゴイ写実ですが、よほど血眼になってデータ収集していたのでしょうか。
対する芦雪は。どうせ実物知らないなら、と、現実の虎をそのまま描写という気はなかったのでしょうね。で、サイズも、本物の虎であってもありえんデカさで。
目指してる「リアル」の性質が違うのですね。
芦雪についてはおっしゃる通りだと思います。師匠である応挙に対する皮肉は大いにあったことでしょう。
虎の瞳は大小に関係なく真ん丸なのですが、応挙にしろ芦雪にしろ、彼らの描いた虎の瞳は猫の目そのものですから、猫好きには猫にしか見えないのです。