2009年03月09日

「秋分」 「彼岸」 並びに 北川冬彦による跋 (詩集「幽界通信」より)。

「秋分」 並びに 「彼岸」 1/2。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。秋分
 
 
數葉 地に敷き
露 草に溢れ
鳥屋(とや)の藁を
卵のぬくみ
思念の果てに
澄む
碧落


彼岸
 
 
一回忌の戒名がすすけて
うすれゆく悲しみの苦さ
ぬかるみでころげた子が
紅い花びらをつけてくる
物を煮る湯氣の中で
子を叱りながら
ふと
遠い山並みの雪は
もうとけたろうかと



「彼岸」 2/2 並びに 北川冬彦による跋。町田志津子の第一詩集「幽界通信」より。思ってみる






 
 深尾須磨子の序文と作者のあと書きになお加えるところは殆どない。たゞ、女性の詩人がえてして過多な抒情と奔逸な感覚をその生命として浮草のように転々と氣まぐれであるのに、町田志津子は現実凝視と自己抑制によって、二十年余りも、他の追随を許さないみずからの詩をこつこつと刻み、一途、氣をそ らさずに現代詩のオオソドックスを目指すネオ・リアリズムへまで押しすゝめてきていることは稀有のことで、賞讃せずにはいられないところである。
 題名の「幽界通信」は、戦争が拉致した彼女の夫との白晝遭遇を書いた同名の詩から私がとったもので、もしも、この題名が感心しないとならば、それは私の責任である。それから、装幀は一切任されたまゝに、「独立」の鐵指公藏に私がたのんでやって貰ったもの、著者に代って筆者にお禮申上げる。

北川冬彦





 ⇒ ページをめくる。 ↓ 

作者本人による「あとがき」を読み、また「奥付」を確認する。


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前の詩、「西芳寺」並びに「三月堂」を読む。


[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]

[目次]



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posted by (旧) hinden (まほまほファミリー) at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 幽界通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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