北川先生の「麺麭」に投稿しはじめ、深尾先生のお宅に伺うようになってから、二十年近くの歳月が流れている。得がたい両先生の教えを頂きながら、戰爭によって日本の女性の多くが受けたと同じ不幸に、私も出あわなかったら、相変らずその生活のように温室的な詩を書きつづけていたであろう。それから第二の私が目覚めたとも云える。詩の中に自分の眞実を見出していくように努力し、創刊された「時間」の同人に加わった。
しかし、さて己をむなしくして書き溜めたものを読み返すと、やはり反故の上に反故を積み重ねている幻滅を味わわねばならなかった。このささやかな詩集も深尾先生の御激励と、北川先生御夫婦の御盡力がなかったら、日の目を見ることにならなかったであろう。私は何よりもまず、先生方の御恩に厚く御礼申上げねばならない。
ここに収めた三十篇は「時間」に発表したものと、数年間の作の中から選んだものとである。大体製作順を逆に排列してあるが、はじめの三篇は中頃のものであるように、順序どおりでないところもある。
最後に「時間」同人の友情と身辺の友人の愛情に深く感謝をささげ、多くの方々の嚴正な御批判をお願いいたしたいと思う。
一九五三年暮
町田志津子
奥付。
詩集
幽界通信
1954
検印
廢止
昭和二十九年三月 十 日 印刷
昭和二十九年三月十五日 發行
定價 一三〇円
著作者 町田志津子
發行者 田畔忠彦
印刷所 時間印刷所
発行所 時間社
東京都新宿區須賀町 一〇ノ一
振替口座 東京 一〇二、三〇三番
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末尾の 2つの詩、「秋分」「彼岸」並びに 北川冬彦による跋を読む。
[町田志津子の第一詩集「幽界通信」]
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ラベル:幽界通信
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